肺炎球菌ワクチン
肺炎は、日本の死因の第5位
2023年の統計によると、肺炎は多くの方の命を奪う病気であり、日本人の死因の第5位となっています。 肺炎は命に関わるだけでなく、回復した後も生活の質を大きく下げてしまうことが報告されています。 ある研究では、肺炎にかかった後、1年経っても元の生活の質に戻れない方がいることが示されています。(図1)
図1 肺炎になって1年経過すると
✓肺炎と診断された患者のQOLスコア(青線)と、肺炎にならなかった場合の対照群のQOLスコア(赤破線)の診断後365日間の推移を示しています。QOLスコアは0から1(完全な健康)の範囲で評価されます。
✓QOLスコアは①移動(歩行)②身の回りの管理(着替えや入浴)③普段の活動(仕事、運動、家事など)④痛み、不快感⑤不安やふさぎ込み
以上の5項目から評価されています。
肺炎の一番の原因は「肺炎球菌」
肺炎の原因として最も多いのが肺炎球菌という細菌です(図2)。 この肺炎球菌による肺炎を予防することは、健康に長生きするためにとても大切です。
図2 国内の入院、外来を問わない市中肺炎から分離された原因微生物の頻度
肺炎球菌ワクチンの種類
2026年4月現在、当クリニックで接種可能な肺炎球菌ワクチンには、2つの種類が存在します。2026年(令和8年)4月1日より、国や自治体による公費(定期接種)のルールが大きく変わり、使用されるワクチンも新しくなりました。
1.プレベナー20(20価結合型ワクチン):現在の公費ワクチン
2026年4月1日以降、これまで長年使用されてきたニューモバックスに代わり、新しく65歳の公費ワクチンとして採用されたのが、この「プレベナー20」です。このワクチンは「結合型ワクチン」と呼ばれる新しい技術で作られており、20種類の肺炎球菌に対応しています。最大の特徴は、免疫を長期間記憶する細胞(メモリーB細胞)を体内にしっかりと作り出すことができる点です。そのため、1回の接種で長期間にわたる強固な免疫効果が持続し、原則として将来の再接種は不要とされています。今年65歳を迎えられる方は、まずこのプレベナー20の接種を強くお勧めします。
2.キャップバックス(21価結合型ワクチン):大人専用に開発された最新のワクチン
2025年秋から日本で接種が可能になった、最新の結合型ワクチンです。プレベナー20と同様に免疫を長く記憶する特徴を持っていますが、最大の違いは「大人の肺炎」に特化して開発された点です。成人の肺炎で重症化しやすい21種類の肺炎球菌をカバーしており、現在大人の間で流行している菌に対する予防効果が最も高く期待できるワクチンです。現在は公費の対象外(全額自己負担の任意接種)となりますが、糖尿病、心臓病、呼吸器の病気、腎臓病などの基礎疾患をお持ちの方や、より幅広く強力な予防効果をご希望の方にとって、非常に優れた選択肢となります。こちらも1回の接種で効果が持続するため、再接種は不要です。
3.ニューモバックスNP(23価多糖体ワクチン):これまでの公費ワクチン
2026年3月末まで、長年にわたり公費の定期接種として使用されてきたワクチンです。23種類と最も多くの菌に対応していますが、「免疫の記憶がつきにくい」という弱点があり、時間が経つと予防効果が弱まってしまう特性がありました。以前は効果を保つために5年ごとの再接種が行われていましたが、最新の医学的ガイドラインでは、より効果の長持ちする結合型ワクチン(プレベナー20やキャップバックス)の登場により、ニューモバックスの再接種は原則として不要であると方針が変わりました。
【2026年4月からの変更のまとめ】
これまで公費接種の主役であった「ニューモバックス」は、国の公費対象から外れました。これからの公費接種は、より免疫が長持ちする「プレベナー20」で行われます。また、ご自身の判断と費用負担で、より大人の肺炎に強い最新の「キャップバックス」を選択することも可能になりました。当クリニックでは、患者様お一人おひとりの年齢や病歴に合わせた最適なワクチンをご提案いたします。
今後のワクチン接種スケジュール(2026年4月現在)
図3
これからの肺炎球菌ワクチンの接種スケジュールは、ご自身の年齢や過去の接種歴によって大きく3つのパターンに分かれます。ご自身が一番当てはまる項目をご確認ください。
■ 今年65歳になる方
今年65歳を迎えられる方(過去に一度も肺炎球菌ワクチンを打っていない方)は、国の定期接種の対象となります。以下の2つのコースからお選びいただけます。
- 基本のコース(プレベナー20を1回接種):65歳になった年に「プレベナー20」を1回接種します。国の定期接種として公費補助が受けられます(自己負担額は5,000円)。1回で免疫が長持ちするため、以後の再接種は原則不要です。
- より強力な予防をご希望される方のコース(キャップバックスを1回接種):大人の肺炎で重症化しやすい菌を最も多くカバーする最新ワクチン「キャップバックス」を1回接種します。全額自己負担(自費)となりますが、糖尿病、心臓病、呼吸器疾患などの基礎疾患がある方に特におすすめです。こちらも1回の接種で効果が持続するため、再接種は原則不要です。
■ 過去に一度も肺炎球菌ワクチンを打っていない方(今年65歳になる方を除く)
過去に接種歴がなく、現在65歳ではない方は、国の定期接種(公費)の対象外となるため、全額自己負担(自費)での接種となります。
- おすすめの接種方法:最新の「キャップバックス」または「プレベナー20」を1回接種します。どちらも1回の接種で免疫が長持ちし、以後の再接種は原則不要です。当クリニックでは、大人の肺炎で重症化しやすい菌を幅広くカバーする「キャップバックス」をおすすめしております。
■ 過去に「ニューモバックス」を接種したことがある方
過去に公費や自費で「ニューモバックス」を1回でも接種したことがある方は、ニューモバックスは時間が経つと効果が弱まるため、免疫をしっかりと長持ちさせる新しい「結合型ワクチン」への切り替えを強くおすすめします。
- おすすめの接種方法:前回のニューモバックス接種から「1年以上」間隔をあけて、最新の「キャップバックス」または「プレベナー20」を1回接種します。全額自己負担(自費)となりますが、このワクチンを1回接種すれば免疫が強固に記憶されるため、以後の追加接種は原則不要となります。当クリニックでは、大人の肺炎により強いキャップバックスへの切り替えをおすすめしております。
特に接種をおすすめしたい方
肺や心臓の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病などの持病がある方は、肺炎球菌に感染すると重症化する可能性があります。 そのため、予防接種を必ず受けるようにしましょう。
ご不明な点は、お気軽に医師にご相談ください。
